「空の青さを知る人よ」(Her Blue Sky)

空の青さを知る人よ

2019年10月公開。
「あの花」「ここさけ」に続く秩父アニメ3作目。

東京でバンドをするのが夢の女子高生・あおいの元にかつて憧れていた慎之介が13年前の姿そのままの「生霊」として現れる。一方、現実の慎之介は31歳で有名演歌歌手のバックバンドを務めていた。

タイトルは「井の中の蛙大海を知らず、されど空の青さを知る」という意味。
(この言葉の前半は荘子ですが後半部分は誰かの創作です)

秩父という山に囲まれた土地で東京からも少しだけ遠い、微妙な閉塞感を描いているのは「あの花」から一貫しています。東京に出てギタリストを目指したもののバックバンドという微妙なポジションの慎之介、妹のために地元での就職を決意した主人公の姉。そして生霊として現れる高校生の姿の慎之介は、謎のバリアのためあるお堂から一歩も外に出ることができません。

見えない殻に閉じ込められて全く外に出ることができない、という共通点が主要登場人物4人にあります。しかしその殻は自分で作ったものでありいつでも飛び出せる、ということに全員が気づくクライマックスが爽快です。個人的には「あの花」と同じくらいの良作でした。

ただ「生霊」が出てくる時点でファンタジーなので、そこは割り切って観賞いただければと思います。