武梨えり『かんなぎ』

かんなぎ: 1 (REXコミックス)

タイトルと表紙から神様の少女(?)が降臨する話だというのは分かります。しかしもう少し早く気がつくべきでした、この子が持ってるのは杖ではなく魔法のステッキだということに。

土地の鎮守である神木が切り倒され、虫の形をした「ケガレ」が跋扈する町。主人公が彫った木彫りの人形から突如出現した少女、土地の守護神「ナギ」は神樹を失ったことを大いに嘆き、自らが神木の代わりとなる偶像(あいどる)となることを決意する…。

これが一応本筋らしきものですが、ヒトの手では処理できないはずのケガレ(虫)は主人公の手によりあっさり始末されるので(しかもナギの方が苦手)シリアスな展開になる余地はほとんどありません。残ったのは、世間知らずでおよそ神様とは思えない言動の「ナギ」が主人公の幼なじみやクラスメイトを巻き込んで起こす騒動の数々。 ある日突然やって来た女神さま、そして幼なじみ。このありがちな設定でもラブコメとか三角関係にならず、純粋なコメディになっているのはある意味スゴイ。2巻ではナギが働き始めたメイド喫茶

お前の格好があまりにもかわいくてやらしくて直視できないから寄るなって言ってんだよ!気づけバカー!!

といった主人公のツンデレ発言もあるわけですが、どちらかというと 


このコマの方が作品の内容を端的に表してる気がします。 1巻の終わりからはナギの妹・ざんげちゃんも登場し、町の偶像(あいどる)としてどちらが上なのか対決し始めたりしてますます面白くなります。キーワードとしては

  • 綺麗な絵
  • シュールなギャグ
  • 独特の「間」

この辺が好きな人は読んでみて損はないと思います。例えば 


「このままではケガレの調伏すらできのうなる」などと真面目な話をしながらごはんにドレッシングをかけるナギ。そして何事も無かったかのように進む話。誰かツッコミを入れる人間はいないのか。 (※2巻ではナギと主人公がそれぞれ「食パンにうまい棒」「食パンにソース」という朝食をとっていた所、さすがに幼なじみののツッコミが入る) ちなみにPCゲームFate/stay nightが分かる人は、Fate同人作品集の「TAKE-MOON」もオススメです(逆に「TAKE-MOON」のノリが好きならこの「かんなぎ」も大丈夫)。

ところで

作者のお兄さんは漫画家の結城心一さんです。どこか兄の影響を受けている部分がある…かもしれません。

関連

たけなしのーと(作者HP)