「ひぐらしのなく頃に祭」が失ったもの

ひぐらしのなく頃に祭

ひぐらしのなく頃に祭は人気同人サウンドノベルひぐらしのなく頃に」のPS2移植版。グラフィックやBGMだけではなく、テキストも大幅に書き直されているようです。シナリオは原作では最終章の祭囃し編の代わりに「澪尽し編」(みおつくし)を収録、原作とはやや違った展開で事件が収束します。

その他PS2版オリジナルの憑落し編(つきおとし)盥回し編たらいまわし)があり、盥回し編は微妙な位置づけですが、原作プレイ済みの人も憑落し編」「澪尽し編」のために買っても惜しくないと思います。

やはりシナリオは面白い。 コンシューマ化にあたりテキストが全面的に書き直されて読みやすくなった部分もあるのですが、原作の方が良かった、分かりやすかったと思う部分もいくつか(個人的には祟殺し編皆殺し編など)。良くいえばすっきりした、悪く言えば説明不足と言いますか。

同じことがグラフィックや音楽についても言えます。原作ではキャラ絵が微妙だという指摘は結構あり(むしろ言わない約束)、それさえ改善されれば…と思っていた人も少なくないはず。で、実際にPS2版で描き直されたグラフィックでプレイしてみると、確かに絵は綺麗になりましたが全然怖くないのです。「怖いイベントCG」もどちらかと言うとギャグにしか思えないほど。

PS2版では背景やキャラ絵が綺麗に描き直されたことによって「昭和の時代、因習に捕われた閉鎖的な寒村」というイメージが、あるいは「この先何が起こるか分からない恐怖」が半減してしまっているように感じます。絵的にはどちらかというと現代の普通の学園もの、端的に言えばそれなんてエロゲ?」という印象です。レナや魅音が豹変しても全然怖くないという感じ。

その点原作は、確かに微妙な絵ではあるのですが「とても萌えとは言い難いキャラ絵」そして「写真を加工しただけの背景」が、恐怖とか不気味さとか、実はひぐらしの世界を表現するのに必要な条件を満たしていたのではと思えます。例えばKey作品にいたる絵が不可欠なように。 そして、コンシューマ版とは言え17禁なのですからもう少し「暴力シーンやグロテスクな表現」があっても良かったかも。アニメ版でさえそういう描写は多数あったので…。

あと音楽についても、原作を知ってる人からするとdai氏の曲がないのはやや物足りないかもしれません。「You」を始めひぐらしの世界観にマッチした名曲が多かったので。ただ、PS2版最終章「澪尽し編」のテーマ曲コンプレックス・イマージュは非常にカッコイイです。この曲はシングル「嘆きノ森」に収録されています。 

嘆きノ森

嘆きノ森

  • アーティスト:彩音
  • Five Records
Amazon

結局、買いなのかどうか

以上のことを踏まえた上で、買いかと言われれば迷わず「買い」だと言えます。原作プレイ済みの人にとってはオリジナルのシナリオ憑落し編」「澪尽し編」のために、またアニメから入った人には、アニメでは語られなかった重要な真相を皆殺し編で知るために、またひぐらしを全然知らない人には原作よりも万人向けな「ひぐらし」として自信を持ってお勧めできます。当然全キャラフルボイスなので、その辺を重視する人にも良いかと。原作を知ってる人は、設定で「既読文章もスキップ」をONにしてSTARTボタンを連打すればあっという間に終わるので、前半はスキップして綿流し以降の展開やオリジナルのシナリオを存分に楽しんでもらえると良いかと。 より万人向けになった「ひぐらしのなく頃に祭」。商業化して入手もしやすくなったので、知ってる人にも知らない人もお勧めしたい作品ではあるのですが、ハマった人は原作もプレイして頂けるとより深くひぐらしの世界に浸れると思います。