安部 司『食品の裏側』

なぜ、コーヒー用のミルクは使い放題なのか。
なぜ、100kgの豚肉から130kgのハムができるのか。

「歩く添加物辞典」とまで呼ばれた著者による食品添加物の入門書。
必要以上に危機感を煽ったり、「○○は買ってはいけない」など企業を糾弾する添加物の本ならいくらでもありますが、著者はかつて食品添加物の商社に勤めていたこともあり、視点が極めてニュートラルでとても好感が持てます。もちろん難しい化学記号や専門用語などもなく非常に読みやすい。数ある添加物の本の中でもオススメしたい1冊です。

例えば、ラーメンのスープは実際にスープをとっているわけではなく「白い粉」を調合したもの。コーヒーフレッシュの原料は生クリームやミルクではなく、植物油を添加物で白濁させたもの。原材料に「pH調整剤」と書いてあれば、pHを調整する添加物が数種類使われていてもおかしくない。

この手の話は枚挙にいとまないですが、だから企業は添加物使うなとか消費者は賢くなれと言っても何も始まらない。それはミートボールが1パック100円であるように、しょうゆが特売で1リットル138円であるように、添加物を使った食品には「早い・安い・大量」、つまり便利さという大きなメリットがあるからです。

料理も自分で作れば添加物無しの食事が楽しめますが(例外もあるようですが)、いつも自分で作れるかと言われたら必ずしもそうではない。スーパーの総菜に頼りたい時や、時間がなくてコンビニのお世話になることもあるはず。そんな時に低コストで手間を省けるのは、食品を安く大量に提供することを可能にした食品添加物のおかげです。

「より安く」「より多く」と消費者が求める。それに応えて、企業は添加物を使って同じ材料でより多くの食品を作る。中身を薄めて、薄めた分は添加物でごまかすと言った具合に。で、売れるので企業はもっと添加物を使う。企業は売上げが上がって喜び、消費者も食品が安く買えるので喜ぶ。いいことづくめです。ただ一点、消費者の健康は大丈夫なのか…という不安を除いては。

一概に誰が悪いとは言い切れませんが、まず知ることから始め、食品を買う際には原材料をチェックすること。安いものには必ずウラがあると心得ること。加工食品に頼るなとは言わないけど、頼り過ぎないこと…などが著者からの提案です。

ソルビン酸ナントカ」だといかにも添加物って感じがしますが、実は最も注意すべきはブドウ糖果糖液糖」そして「塩」なのではないかと思いました。ブドウ糖果糖液糖については血糖値を急激に上昇させ糖尿病の引き金になること、塩については減塩が良いと言う話ではなく、国内ではミネラルの入った塩がほとんど流通してないという話です。

他にも「アミノ酸」や「たんぱく加水分解物」など、一見危なくなさそうなものも実は危ないんだよーという話がやさしい文章で書かれています。誰かを責めたりしない姿勢にも非常に好感が持てるし読みやすい。入門書としては最適ではないかと思います。興味のある方はぜひ。

…と、はてブで添加物関連のエントリが盛り上がってたようなので書いてみました。今は反省している(嘘)。