梅田望夫『ウェブ進化論』

普段からネットに親しみ、梅田さんの名前も知っているような人にとっては不要な本…かと思っていた。が、某所で某SE社の編集さんが「700円だけど2200円分の価値がある本」と評しているのを見て「買わないと」と思い書店へ。池袋では既に完売だったので近所の書店で購入。目次をパラッと見ただけで、何と中身の濃い本かと思った。入門の入門書的な位置づけにある新書でこれほど密度が濃く、かつ分かりやすい本はなかなかない。

サブタイトル「本当の大変化はこれから始まる」からも分かるように、本書は今ネット上で起こりつつある革命を普段ネットに親しんでない人に向けて分かりやすく解説した本です。しかし日常的にネットを使いこなし、Web 2.0とかロングテールという単語を知ってる人にもぜひ読んで頂きたい。漠然と感じていたことがシンプルな言葉で表現されていて、何度も溜飲の下がる思いがするはずです。

ITバブルはとうに弾け、情報革命と言っても「生活が便利になる」とか「ビジネスに役立つ」ぐらいの受け止め方をしてる人がほとんどだと思う。確かに2~3年で目に見える変化はないかもしれないけど、20年~30年というスパンで考えると社会が大きく変化し、それは産業革命や鉄道革命以上のインパクトを持つ…というのが本書の概要。

例えば「一億人から1円ずつ貰えば金持ちになれるんじゃね?」ということは誰でも考える。そして実践しない。それは1円くれる人もいるだろうけど、手間と時間が掛かりすぎるから。しかし現在はネット上の広告アフィリエイト)という形でそれが可能になった。わずかな金額を不特定多数の人から集める、つまりちりも積もれば山となる。自分でちりを集めるわけにはいかないけど、ブログに広告を貼るなどしてネット上に自分の分身を置いておく。そうすると自分の分身が24時間体制で勝手に稼いでくれる。

日本に住んでいるとアフィリエイトなんて小遣い程度にしかならないと思われがちだけど、英語圏の人は違う。例えば頑張って月に500ドル稼ぐとする。アメリカの人にとってはほんの小遣いだ。しかし、アクセスさえ集めれば途上国の人だって500ドル稼げてしまう。というわけで英語圏にはGoogleアドセンスだけで生計を立てている人も増えているらしい。つまりアフィリエイトは先進国と途上国との貧富の差を是正するという可能性すら秘めている。

情報革命の中心にいるのは間違いなくGoogleで、Googleがいかに凄いかは形を変えて何度も語られます。普段Googleを使ってる人でも「検索で広告収入を得ている会社」ぐらいのイメージしかないと思いますが、実際にやっていることは「知の秩序の再編成」だと。

「何かを表現したって誰にも届かない」という諦観は、「何かを表現すれば、それを必要とする誰かにきっと届くはず」という希望に変わろうとしている。(p.14)

これが究極の形だと思う。メジャー/マイナーに関わらず、必要な情報が瞬時に届き、また自分の発信した何かが必要な人に届けられる世界。既にGoogleはてブなどのおかげで実現しつつありますが、今後より効率の良い知の共有システムが構築され、人類の進化も加速度的に進んでいくような気がしています。そのための情報発電所を建設してるのがGoogleだと。

とにかく今は大きな変化が現在進行形で進んでる時代で、そんなエキサイティングな時代に生まれたことは非常にラッキーだと思います。この記事もブログも、10万人とはいかなくても100人ぐらいの必要な人に届けばいいなと思って書いてますが、とにかく非常に面白く一気に読めるので未読の人はぜひ。ネットに詳しい人も詳しくない人も必読です。

そして、この記事でアフィリエイト収入が10円でも20円でもあればいいなと願っております(切実)。