佐々木倫子『Heaven?』

 極上のレストランコメディ。かなり笑えます。 著者もタイトルも有名すぎてここに書く必要はないほどですが、もし未読なら超オススメ。

有り得ない場所(墓地の裏)にある、有り得ない状況(ほぼ全員素人)でオープンしたフレンチレストラン。そんなレストランを始めたのは傍若無人、ワガママ三昧の謎のオーナー(表紙真ん中の人)。必然的にトラブルが続発してしまうが、全ての原因はこのオーナーにある。 そんなのっぴきならない状況、毎回起こるトラブルやクレームの嵐を極めて冷めた視点で見守りつつ解決していくのが唯一のまとも人間、サービスマンの伊賀観。オーナーも毎回あり得ない程ハイテンションだが、この伊賀くんもあり得ないほどテンションが低い。熱すぎるダメ女×冷めすぎたマジメ男、という落差の激しすぎるこの構図。例え人前で読んでいても笑いをこらえるのは相当困難なはず。

「レストランで一番大事な事は何か分かる?」
「……………」
「酒が飲める事よ!!!」

この作品はレストランが舞台だけど、実はレストランでなくても良かったのかも。それは、この作品が単なるコメディに留まらず「サービスとは何か?」という著者の深い洞察が読み取れる気がするから。笑いながらも何かと考えさせられます。サービス業関係者には下手なマニュアルよりお勧めかもしれない。 巻末にある「ご協力頂いた方々」の一覧を見ても、相当な取材の上で描かれてることが分かります。レストラン漫画として、コメディとして、そしてサービス論として。いずれにしてもかなり完成度の高いコミックだと思います。もちろん、笑いを求める人には特にオススメ。