ニュースの天才

ニュースの天才(字幕版)

ニュースの天才(字幕版)

  • ヘイデン・クリステンセン
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邦題は分かりやすいが、ちと格好悪い…(原題は「SHATTERED GLASS」)。
地味であまり評判も高くはないけど、個人的にはかなりツボでした。こういうドキュメンタリー系作品が好きなのかもしれない。

敏腕ジャーナリスストがものにした41のスクープのうち、27の記事が捏造だった…。これは、アメリカ大統領専用機に唯一備え付けられている、米国で最も権威あるニュース雑誌「THE NEW REPUBLIC」編集部内で1998年に実際に起きた事件を映画化した作品です。

人気ジャーナリスト、スティーヴン・グラスの書いたある記事に疑問を持ったライバル誌「フォーブス」の記者はその矛盾を次々に指摘、グラスの上司である編集長もその誤りを認めざるを得なくなる。「少年に騙された」「断片的な情報で書いた」などつい出来心で書いてしまった記事だと。しかし実際は取材に行ったビルも会社も存在せず、全てがスティーヴンの創作だった事が発覚。そしてその記事だけではなく、過去に書いた多くの記事が捏造だった事が明らかになる…。

というそれだけの話なのですが、これがなかなか面白い。例えばコロンボ古畑任三郎のような、倒叙スタイル的面白さがあります。最初から犯人が分かっているが、どうやって犯罪は暴かれるのか。また犯行に至った心境とは。ジャーナリストとして捏造は最もやってはいけない事のはずですが、最後には同情すら覚えます。

ライターとして事実を伝えるのは大事だけど、読者を喜ばせるのもまた大切なことです。実際、編集会議でも彼がネタを発表するのを誰もが心待ちにしていたし、当然読者の反響も大きかった。彼の中では「人を喜ばせたい」という気持ちが「有名になりたい」という気持ちよりもずっと強かったのでは。ジャーナリストとしての信頼は失ってしまったけど、彼のした事が全て悪いとも言えない気がします。