2019年公開。
ケン・ローチ監督作品。
フランチャイズの宅配ドライバーとして独立した父親と訪問介護で働く母親、そして息子と娘。
ギグ・エコノミーに翻弄される家族の悲劇を描く。
原題は「配達に来ましたが不在でした」という不在連絡票の定型文ですが、労働が過酷すぎて家族になかなか会えないという意味も含まれています。
父親は1日14時間の週6日勤務で、勤務中にトイレに行く暇すらない。休むことは許されずノルマ未達など何か問題があれば制裁金が次々と課される超絶ブラック企業。母親の訪問介護も同様のブラックさ。さらに息子は学校を日常的にサボっていて大学に行く事も諦めており、やがて更なる問題を引き起こしてしまう。
この作品はイギリスのドン・レーンさんという配送会社で働いていた実在の人物にインスパイアされています。ドライバーとして働いていた彼は体調を崩しても会社からの罰金を恐れ病院に行くことすらできず仕事中に倒れ、亡くなっています。
劇中ではそこまで明確に描かれませんが、どう考えても全てが好転して上手くいくとは思えない、絶望を示唆する終わり方です。と言うか最初から最後まで何の救いも無く、絶望が加速するだけの物語です。そしてこれはフィクションではなく、世界の現実と言っても過言ではないと思います。