柊あおい『星の瞳のシルエット』

さすが「全国250万乙女の聖書(バイブル)」と言われるだけの事はある。 少し前の作品なのでちょっと絵が古いけど、少女マンガの名作中の名作だと思う。 幼い頃出会った少年に「星のかけら」をもらった香澄。 中学生になっても、その想い出がずっと忘れられなかった香澄だが、親友の真理子が好きな「久住くん」にしだいに惹かれていく…。 この作品のスゴイ所は、登場人物のほぼ全員が友情と恋愛の間で板挟みになっていること。男の子も女の子も。少女マンガでこれほど複雑な(悪く言えば泥沼化した)ストーリーもなかなかない。大好きな相手から告白されても友情を優先して断り続けてしまったり。そんな友達のためにとった行動が逆に友情にヒビを入れてしまい…と、ほぼ全員が恋愛と友情の間で悩み続けます。 少女マンガだからハッピーエンドしかあり得ないわけだけど、香澄ほか登場人物が「自分の気持ちに素直になる」という結論に達するまでにはかなりの紆余曲折があります。先が読めません。まあ「素直になったら全員が幸せになった」とか「思い続けていた相手は幼い頃の想い出の少年だった」という所はいかにも少女マンガで、友達の間でここまで泥沼化することも現実にはあまりない。でも逆に言えば、ここまで少女マンガ的な要素が凝縮された作品も他にないのでは。 恋愛と友情の間で悩み続ける、少女マンガにしてはかなり深い話です。 読めば、なぜこれが「乙女の聖書」と言われるのか分かるはず。