売上げから見るハルヒとエヴァ
エヴァ関連商品売上データ 説明も不要かと思いますが『新世紀エヴァンゲリオン』は1995年10月4日から1996年3月27日まで放送されたアニメです。で、上記リンク先は放送から1年後、97年頃の関連グッズ売上げのデータです。
- ビデオ/LD…10巻合計256万本
- 残酷な天使のテーゼ(CD)…32万枚
- コミック…3巻合計500万部
と、さすが社会現象と呼ばれただけあって桁違いなのが分かります。涼宮ハルヒEDの「ハレ晴レユカイ」が10万枚突破、原作ライトノベルが8巻で250万部としてもさすがにエヴァほどではないかなと。今ではエヴァのコミック版は累計1500万部を越えているそうで…。
オタクに与えた影響
もちろん売上げが全てではなく、エヴァ以来10年ぶりにアニメを見たと言う人も少なからずおり、ハルヒが社会への影響を全く与えていないとは言い切れません。ところでオタク論と言えば東浩紀氏ですが、彼は『動物化するポストモダン』の中で、
『ガンダム』は、79年に放送された最初のテレビシリーズ以降、つぎつぎと続編が作られたことでも有名な作品である。そしてそのほとんどは、総監督である富野由悠季の監修のもと、一つの架空の歴史にそって展開されている。対して『エヴァンゲリオン』には続編が作られていないし、また作られる予定もない。かわりに原作者の制作会社ガイナックスが展開しているのは、本章の冒頭でも述べたように、コミケで売られている二次創作に限りなく近い発想の関連企画、たとえば、登場人物を使った麻雀ゲームであり、エロティックな図柄のテレフォンカードであり、さらにはヒロインの綾波レイを対象とした育成シュミレーションゲームである。(中略)この作品でガイナックスが提供していたものは決して一つの「大きな物語」などではなく、むしろ、視聴者のだれもが勝手に感情移入し、それぞれ都合のよい物語を読み込むことのできる、物語なしの情報の集合体だったわけである。
と、エヴァ以前/以降で物語の消費のされ方が根本的に変わってしまった事を指摘しています。『ガンダム』ファンのように、宇宙世紀の年表など背後に隠された世界観(大きな物語)の消費から、キャラのデザインや設定などの断片のみを消費するデータベース型消費(©東浩紀)へと。エヴァ/ハルヒの比較では主に「長門有希は寡黙な所が綾波レイに似ている」などキャラ設定の対比をする人が多いのもこのことを裏付けているのでは。
そしてハルヒは…
ハルヒは確かに近年稀に見るクオリティであり、意味不明な第1話から始まって時系列を全く無視した構成など終始視聴者を驚かせ続けてはきましたが、社会現象とまで言わなくてもオタク界に何か影響を与えたのか、ハルヒがオタクの質を変えたのか…と考えるとそれはやや疑問です。もしかしたら「ハルヒ以前/以後」が「エヴァ以前/以後」のように語られる日が来るかもしれず、祭りはまだまだ始まったばかりなのかもしれませんが…。
アニメ史を塗り替えた作品
では最近アニメ史を変えたほどインパクトのある作品はないのか、と言われたら真っ先に「MUSASHI -GUN道-」を挙げておきたい。裏の歴史ですが。それまで作画崩壊の代名詞だった「ヤシガニ」という単語を完全に過去のものにしたその功績は後世まで語り継がれることと思います。これ以上語ると命に関わるので止めておきますが、最後に一つだけ。何故後ろに月が!(©小早川秀秋)