07th expansion「ひぐらしのなく頃に解 祭囃し編」

「惨劇なんてなかった。あったのは、悲劇と喜劇。」(©竜騎士07

シリーズ最高傑作。 雛見沢村連続怪死事件、通称「オヤシロさまの祟り」最終章。 全8編のビジュアルノベルひぐらしのなく頃に」の完結編。第5話以降は「ひぐらしのなく頃に」として第4話までの惨劇の真相を描いており、前作「皆殺し編」で既に惨劇の裏側がほとんど明かされてしまったので最終話はエピローグ的なものになると思っていました。

全てが解決して惨劇の起こらない「ひぐらし」なんて味気ないな、まるでジェットコースターのようにゆっくりと上っていき、綿流しという頂点から奈落の底に一気に叩き落とされる快感こそひぐらしの醍醐味ではないか…そう思っていました。

しかし今作は前7作の全てを質、量ともに桁違いに上回る、シリーズ最高傑作と言える内容だったと思います。惨劇の起きる「綿流し」とは1年に1度のお祭りですが、そのお祭りがここまで盛り上がるとは予想できませんでした。

感想(なるべくネタバレなし)

できるだけネタバレなしで書いてみます。今作は惨劇の元凶とも言える「強固な意志」と、昭和58年6月を平穏無事に越えたいという意志との直接対決。それぞれの意志の背後に何があるのか、とりわけ「強固な意志」の背後には何があったのか…ということが数々の断片(TIPS)と共に語られます。まるでバラバラだったピースが一つの形になっていくように。これまでは語られなかった伏線が次々に回収されていくのがとてつもなく快感です。

バラバラになったカケラが一つの形になった時、惨劇を回避する方法が見えてきます。それ自体は単純なギミックでありミステリとしては面白みのないものかもしれませんが、何しろ雛見沢村で起こる最大の惨劇に挑むわけですからその過程も壮大。ここまで話を大きくするのかとさえ思いました。これまでいらない子だと思われてきたキャラクターも含め、全員が大活躍する一大エンタテイメント。「ヘタレ」「役立たず」「時報」などの不本意な称号を持つ彼らさえ美味しすぎる見せ場を次々に奪っていくのですから、ツッコミを入れる事さえ忘れただただ爆笑するしかありません。 ここまで出来過ぎだといっそ清々しい…と、終わったからこう言えますが、最後の最後まで息をつかせぬ展開でした。惨劇自体は終わるだろうけど、それはどのように回避されるのか、何人犠牲が出れば済むのか…と、緊張の糸は最後まで切れる事はありません。その結末はぜひご自身で見届けてみて下さい。

総括・「ひぐらしのなく頃に

ひぐらしのなく頃に」は犯人やトリックを推理するミステリではなく、そもそもどこから推理すれば良いのかを推理するメタ・ミステリと言えます。なのでこれをミステリとして語るといろんな方面から怒られそうですが、一般的にミステリの醍醐味はロジック、トリックよりも人の心理や動機を解明するところにあるのでは…と思います。散々煽っておいて「実は単なる事故でした」「実は悪意なき動物の仕業でした」というのではやや興醒めです。 「人か、祟りか、偶然か」というのはひぐらしのキャッチコピーの一つです。原作者の竜騎士07さん曰く解答は「それら全て」だそうですが、何より人の意志が明確に介在している事、しかも最終話「祭囃し編」で明確に語られたように、さまざまな人の意志が幾重にも折り重なっていること、これこそがひぐらしの面白さの本質ではないかなと思ったり。それらの人々の背景全てを知ってしまえば、惨劇なんて最初からなかった…とさえ言えます。

「惨劇なんてなかった。あったのは、悲劇と喜劇。」(©竜騎士07

惨劇の元凶である「強固な意志」でさえ赦される立場にあるということ。それがひぐらしを通して伝えたかった原作者のメッセージなのでしょう。本人曰くそれは「ファンタジー」だそうですけど。

とにかく、

ひぐらしのなく頃にはビジュアル(サウンド)ノベル界に新風を吹き込んだ一大傑作と言えるでしょう。同人作品なので荒削りな部分も多々ありますが、それとかイラストを含めても絶賛に値する、素晴らしい作品だと思います。この時代に生きてこの作品に触れないのは非常にもったいない話です。できれば、尺が足りなすぎなアニメ版やまだ完結していないコミック版ではなく、原作をプレイして頂ければと。

この2つを買えば全8シナリオを読む事ができます。ゲームではないので、攻略したり行き詰まったりする必要はありません。同じ値段で小説を何冊か買うよりも遥かに楽しめるはず…です。コミック版は入り口としてお勧めできますが、ここはやはり原作を。皆殺し編で辟易した人もぜひ。祭囃し編まで読まずしてひぐらしを語るなかれ…とも言えるでしょう(その上で賛否両論はあるでしょうけど)。同人作品なので、お求めはとらのあななどの同人ショップ(or通販)で。しつこいですがMacでもできますのでぜひ。 そんなわけで、知ってる人も知らない人にも「祭囃し編」は激しくお勧めです。しかし最終話である今作こそ、このキャッチコピーが最も良く似合うと思いました。 「惨劇に挑め。」(©竜騎士07) そして、 「彼らには過酷な日々を。そして僕らには始まりを」。(©Key)

最後に、祭囃し編ネタバレ

  • 園崎お魎はA級のツンデレ
  • 入江の固有結界「メイドインヘブン」はあらゆる宝具を凌駕する。
  • その頭は、きっとメイドでできていた。

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祭囃し編・隠し要素(※本当にネタバレ)

  1. クリア後、シナリオジャンプから「カケラ紡ぎ」を選び、1度も間違わずに全てのカケラを紡ぐと…?
  2. スタッフルームの最後で右クリックすると…?