竜騎士07×鬼頭えん『ひぐらしのなく頃に 鬼曝し編』

特別な何かが欲しかったわけじゃない。 ただ…幸せでいたかっただけなのに…

人気同人サウンドノベルひぐらしく頃に」の外伝的コミック。 女子高生の夏美が都会に引っ越してから1年。幸せな日々も束の間、故郷・雛見沢村で起こった謎のガス災害を機に全ての歯車が狂い始める。事件を「オヤシロさまの祟り」として奇怪なおまじないを始める祖母、そして崩壊して行く家族。「オヤシロさま」とは何か、雛見沢出身者には一体何があるのか…。惨劇に挑め。

と、こんな感じのサスペンスホラーです。原作にないオリジナルのシナリオだから…ということもありますが、既にコミック化された他のシナリオ(鬼隠し編綿流し編祟殺し編)に比べてもかなり評判は高いように思います。少なくとも出血量は最多ビジュアル的な恐怖も最高と言えるのでは。 鬼曝し編が他のシナリオより恐怖を感じられるのは生々しすぎる描写に加え、原作の「寒村での惨劇」といったフィクション的空間ではなく「街に住む普通の家族に起こった惨劇」という、身近な設定だからこそ。惨劇への転落はほんの些細な出来事から始まり、一見幸せに見える自分たちの生活もそういったものと隣り合わせなのでは…? というのが竜騎士07氏が贈る恐怖であり、メッセージなのでしょう。「幸せな日常は儚い」ということは本編でも何度も繰り返されたメッセージであり、だからこそタイトルにはひぐらしが冠されているのだと思います。

梨花ちゃまや沙都子など、本編の登場人物があまり出てこないので「ひぐらし」であることを忘れそうになりますが、これはまぎれもなく「ひぐらしのなく頃に」外伝です。つまりひぐらしルールに沿って描かれています。2巻で完結で、2巻の後半(最終話)はになってるので、そこを読む前に真相を推理してみるのも良いかもしれません。勘の良い人なら分かるかもしれませんが、思わず唸ってしまう結末が用意されています。祭囃し編(最終話)までプレイした人はこの「鬼曝し編」も買ってしまうとは思いますが、スルーしてた人もぜひ新たな惨劇に挑んでみて下さい。ひぐらしのサントラを聴きながら読むと恐怖が倍増するかも(?)。

で、「外伝」なのでひぐらしの知識があった方がより楽しめます。初めての方は、コミック版の鬼隠し編綿流し編祟殺し編を読んでからこれに挑むことをお勧めします。そしてハマったらぜひ原作を! それだけが私の望みです(©前原圭一)。