Key「リトルバスターズ!」

リトルバスターズ! 初回限定版

ずっと、そうして彼らと生きていたら、 僕はいつの間にか心の痛みも寂しさも忘れていた。 ただただ、楽しくて… いつまでもこんな時間が続けばいい。 それだけを願うようになった。

概要

Keyの第6作目リトルバスターズ!(以下リトバス)は、幼なじみ5人組とその他愉快な仲間たちで送る高校生活。幼なじみ5人組、という設定以外はよくある学園ものです。

感想など

このストーリーを読む限り「ずっと仲の良かった幼なじみとの間に次第に亀裂が生じるが、最後はみんなで仲直り♪」という凡庸なシナリオを想像していたのですが、さすがにそんなことはなく、最後は麻枝さんらしい「Key」のシナリオでした。またはロゴに猫が使われている事から「実は鈴の正体は猫でした!」というn番煎じネタかと心配もしたのですが、それも杞憂に終わったようです。 ただ、各ヒロイン毎のシナリオは…。これまでのKey作品では

  • Kanonなら「あゆ」以外にも「舞」「真琴」
  • AIRなら「観鈴」以外にも「美凪」「SUMMER」
  • CLANNADなら「渚」以外にも「ことみ」「風子」

などメインヒロインの他にも素晴らしいシナリオがいくつかあったのですが、今作はメイン以外の印象がとても薄いです。しかも例によってそれらを全てクリアしないと麻枝さん謹製の本筋に辿り着けないので、序盤から中盤にかけてはとても長く感じます。しかも1日1日が長いので、その個別シナリオに到達するまでも異常に長く、話が一向に見えないままよく分からないバトルやミニゲーム、お使いなどを淡々とこなさなければなりません。一応「野球の試合をする」という当面の目標はありますが、これといった事件の無いまま普通の学園生活が延々と続いていきます。

例えばAIRなら「翼人伝説」CLANNADなら「幻想世界」という非常に大きな謎が最初から提示されているのですが、リトバスではそういった仕掛けが何も無いように見えるので序盤はかなり退屈です。ただ、その「平和な高校生活」「仲間たちとの馬鹿騒ぎ」を退屈なほどにさんざん見せておいて安心した頃に…という手法はひぐらしのなく頃ににも通じるものがあります。なので序盤が退屈でも構わないのですが、個別シナリオはもう少し破壊力があっても良かったのではと思ってしまいます。いろいろ制約があったのかもしれませんが。

で、本筋は斬新ではないかもしれませんが非常に良かったと思います。そこに到達するまでは「これは本当にKeyのゲームなんだろうか…」と不安になったものですが、最後はやはりKeyのシナリオでした。主人公とヒロインの関係(つまり恋愛)を最重視するのではなく、それ以上の何かを描いてこそKeyだと思うので。例えば家族の絆とか、今作だと「強さ」でしょうか。これまでの作品にもあった「一か所に留まるのではなく、どこまでも高みを目指す」という麻枝ism溢れる作品だったと思います。ただ、今回は良かったとして麻枝さんが書かない次回から大丈夫なのか心配です。個別シナリオとか見ると特に。 結論としては、最後のシナリオが素晴らしかったとしてもそこに辿り着くまでが長いのでお勧めできるのか微妙な感じです。誰にでもというわけにはいきませんが、気になる人にはお勧めです。

音楽について

あと、別売のCDに収録されているOPのLittle Busters!、EDの“Alicemagic”、挿入歌の“遥か彼方”はとても素晴らしく、特に“遥か彼方”はクリア後に聞くと心に沁みる名曲ですが、本編のBGMがこれまでに比べるとやや弱いかなと。「夏影」「渚」のようなメインテーマもありませんし、「潮鳴り」や「Harmony With Sorrow」のような泣かせ曲もないので。まああくまでこれまでと比較して…という話なのでサントラの発売は楽しみです。

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