冬目景『イエスタデイをうたって』

大学を卒業しても定職に就かず、コンビニでバイトをしている魚住。そこに現れた、カラスを飼ってるちょっと変わった女の子ハルと、大学時代の同級生シナ子。なかなか前に進まない片思い、三角関係、そして将来の夢…。アンニュイな雰囲気の中にも切なさと懐かしさが漂う、モラトリアム青春グラフティ。 つい最近、2年半ぶりに新刊が出ました。話自体もかなりゆったりとしたペースで、いつまで経っても曖昧な態度の彼らに業を煮やす人もいるかもしれません。でも、同じ所を回ってるようで、少しづつ確実に進んでいきます。恋も仕事も。 どちらかと言うと、ストーリーよりは情景とか雰囲気を味わう作品だと思います。そして、今までの人生で挫折とか無力感を感じた事のない人には理解できないかもしれない。でも、例えば実らない恋をし続けてきた人とか、夢を持ってたけど諦めてしまった人、今の仕事に疑問を感じてたり、自分が何をすれば良いのか分からなかったり…と、若者にありがちな悩みを一度でも持った事のある人には分かるはず。共感できると思います。 ものすごくオススメというわけではありませんが、この雰囲気は好きです。随所に感じられる無力感が今時の若者らしくて。振り返れば、これが青春だったのかもしれない…(遠い目)。