桃森ミヨシ『ハツカレ』

 女子校育ちのチロがある日突然、男子校生のハシモトくんに告白される。お互いに初恋で初めての彼氏(彼女)で緊張しっぱなし、不安でいっぱい…という、今どき珍しい純情恋愛物語。りぼん並みに初々しく、ウブすぎるところがこの作品最大の魅力です。 非現実的、といえばあまりに非現実的。いきなり電車で「ずっと前から気になってん」とか言われるし、チロはチロで2日後には「あ、あの、好きや」と言ってしまう。いいのかこれで。そしてハシモトくんはカッコ良くいい人そうではあるが、2巻まで読んでも何者なのかさっぱり分からない。 しかし重要なのは初々しさ。女の子は緊張してるが相手の男の子はクール、ってパターンはよくあるが、男の子も赤面して緊張しまくり…って話はあまりない。お互いに奥手だから、付き合ってるけど相手の事が良く分からない…というのは自然な事かも。最初の設定は現実的とは言いがたいけど、付き合い始めてからの2人の関係は驚くほどリアルです。 あんまり噛み合ってなかったりするけど、お互い本当に相手の事を思いやっている。利害関係だけで成り立ってるような恋愛とは正反対で、読むとほのぼのと温かい気持ちになれます。チロの世代の人にも、初々しさなんてとっくに忘れてしまった人にもオススメ。