時間は二度と戻らない。 そして良くも悪くも、今と言う瞬間は二度と戻ってこないのだ…と、身にしみて痛感させられる作品。時の流れはなぜ、こんなにも切ないのだろう。 結婚が決まった26歳の杏。荷物を整理していると部屋から砂時計が出てくる。それは昔の自分にとっては宝物のようなものだった…と、そこで14年前の回想が始まるわけです。12歳の冬、両親の離婚をきっかけに東京から島根へと越してきたあの日を。 この作品のスゴイ所は『砂時計』というタイトルの通り確実に時間が進んで行くこと。例えば第1話は12歳・冬だけど第2話は14歳・夏。3話が15歳、4話は16歳…。1話1話それぞれも泣けるけど、回想という形をとっているためか余計に切なく感じられます。まるでアルバムに入ったセピア色の写真を見ているかのよう。表紙の絵もキレイだけど、これらが全て過去の想い出だと思うと何か泣けてきます。 東京と島根。友情と愛情。そして家族。大切なものはたくさんあるけど、全てを選択できるわけではない。時には何かを犠牲にしなければならないこともあるし、何を選べば良いかは分からない。ただ時間は元には戻せないし、失ってしまったものは二度と戻らない。自分の選択が正しかったかどうか、それも誰にも分からない。 切ないと言うか、人生の重みが感じられます。良くも悪くも過去に戻ることはできないし、自分が生きられるのは今この瞬間だけ。砂時計で言えば真ん中の部分。 ネタバレしないように書いてるので何か抽象的な表現になってしまいますが…感傷的な気分に浸れる、珠玉の名作だと思います。切ない恋物語が読みたい人はぜひ。