岡本 倫『エルフェンリート』

【注意!】この漫画には暴力シーンやグロテスクな表現が含まれています。

最近、地上波でアニメが放送されているのを見て「これは…!」と思い、勢いでコミックを全巻買ってしまうほどハマってしまいました。ここまで話にのめり込んだのは、同じヤングジャンプ「GANTZ」以来かも。あまり一般受けしないとは思いますが、個人的にはかなり衝撃を受けた作品です。 て言うか表紙見れば分かるけど「萌え」でしょ? …と思うのは仕方ない。この表紙の女の子には角が生えており、それだけでもネコミミに近い萌え要素ではある(ツノの生えた子=鬼娘は「うる○やつら」を彷彿とさせますね)。しかも口癖は「にゅう」。萌えキャラとしては完璧。 さらに、物語は主人公が幼なじみの女の子と再会する所から始まる。で海岸でこの角の生えた子と出会うと。他にも主人公にはなぜかいろんな女の子が集まってきますが、いわゆるハーレム漫画を期待する人…は絶対に読まないで下さい。これは平気で手首が飛んだり、足がちぎれたり、首が吹っ飛んだりする漫画です。 角の生えた子は二重人格。一つ目の人格は「にゅう?」としか話せない萌え萌えキャラ。そしてもう一つは、身近にいる人間を殺さずにはいられない殺人鬼。二角奇人(ディクロニウス)と呼ばれる彼女は身体から無数の見えない腕(ベクター)を伸ばし、周囲の人間を殺戮し続ける。何のために殺すのか、角の生えた種族とは何なのかは分からない。最初に分かっているのは、この角の生えた種族を極秘に研究している施設があること、彼女はそこから逃走してきたこと。 主人公は幼なじみと久々に再会したは良いものの、昔のことはあまり覚えておらず、わずかに残る記憶も何か変。一体過去に何があったのか…。しかし、話が本当に面白くなるのは主人公の過去が明らかにされてからです。週刊誌連載で単行本が10冊も出ているのに、行き当たりばったりで話が進むのではなく、あらかじめ完成されたシナリオが用意されてる(ように見える)所は本当にスゴイ。しかも一寸先は闇。全く予測不可能と言うか、1ページめくっただけで話が全然違う方向に転んでることが珍しくない。読んでてこれほど期待感と緊迫感で満たされる漫画は、なかなかない。 大切な人を失ってしまう悲しみ。得られない平穏な日常。言い知れぬ絶望と孤独感。そしてわずかに残る希望。自分の居場所はどこに?という疑問は、登場人物全てが抱える悩みかもしれません。そしてこんな過酷な状況の中、自分は何を選択すべきなのか、と。 ある意味非常に救いようのない話で、ここまできて「死んだ人全員復活!」なんてことは絶対あり得なさそうな感じです。しかし、ご都合主義なシナリオに物足りなさを感じた人にはぜひオススメしたい作品。心ゆくまで深い悲しみを味わって下さい。 で、話が非常に面白いだけに、最初の方の絵がやや物足りないのがちょっと残念。これでGANTZ並みの描写力があればもう少しヒットしたはず。その意味ではアニメ版の方が面白い…かもしれません。DVDがR15指定されてないのが不思議なぐらい、残酷描写のオンパレードですが。 最後に、どうしてアニメをちらっと見た時に気になったのか、それは主人公の幼なじみの声優が能登麻美子さんだったから…なんて口が裂けても言えない。