財前丈太郎は「MUSASHI-GUN道」を超えるか

財前丈太郎とは

7月からのアニメ新番組が次々に始まっている中、第1話放送直後から「早くもポストMUSASHIの登場か!?」と別の意味で盛り上がっているアニメが「内閣権力犯罪強制取締官 財前丈太郎。原作はコミックバンチ連載で、政官業の癒着を取り締まるという劇画調の漫画。

主人公の超法規的捜査活動のスケールの大きさから、そのアニメ化にはいくつもの困難があった。しかし「大人のためのアニメを作りたい」と集結した超一流スタッフとキャスト達によって、遂にアニメ化が現実のものに!

なぜか超一流スタッフの中にはMUSASHI-GUN道」のキャラデザの人も入っていますが、こちらに注力していたという事でしょう(おそらく)。冒頭では戦闘機にトゥーンレンダリングを使うなど、それほどの酷さは感じられません。

静止画のみのオープニング

しかしオープニングから徐々に怪しくなってきます。最も気合いを入れるべきOPが止め絵のみ。それが許されるのはEDだけだと思いますが、百歩譲れば無難にまとまっているとは言えます。

そして本編。

とりあえず、

  • 顔がデカイ。デカ過ぎる
  • その銃はマスコミのインタビューか
  • 車やヘリが適当過ぎ
  • 「だっぽん!!」(?)

などなど、MUSASHIに負けず劣らずツッコミ所満載。 しかし、それらを差し引いてもなお気になるのは「とにかく動かない」ということです。まるでカメラがずっと固定されてるかのように。口パクですらなるべくしないように、作画枚数を極限まで減らす努力が伺えます。そのためMUSASHIで見られるような「同じキャラなのに何種類もの顔がある」という現象は起きていませんが、顔が突然デカくなるなどの超演出を除けば、映像としての面白みは薄い気がします。それに比べるとMUSASHIは「頑張って動かそうとしたけどこれが限界」という感じでしょうか。

MUSASHIとの比較

MUSASHIは酷い酷いと言われつつも、結構みんな楽しんで見てると思います。他の制作会社が作ったら普通に面白いアニメになったのではないか、とも良く言われます。それは、酷いのはあくまでコンテや作画であって、キャラや設定には魅力を感じている人が多いからでは。そうでなければお絵描き掲示板のレベルが異様に高かったり、YouTubeにクオリティの高いMAD(ex.MUSASHI -GUN道- アナザーオープニング)が多数UPされたりはしないはず。これほどハイレベルの職人さんが集結するアニメもなかなかない。 関係ありませんが、YouTubeMUSASHI -GUN道 第2話ダイジェストのアクセス数は「涼宮ハルヒの憂鬱」EDのハレ晴レユカイ以上だったりします。作られたネタやMADの数では、MUSASHI涼宮ハルヒと肩を並べているはず(?)。

財前丈太郎の今後

財前丈太郎」は第1話では超演出や超作画で話題を呼びましたが、キャラ的に面白かったのは最後の主人公のセリフ「だっぽん!!」ぐらいでしょうか。財前がネタアニメとして大成するには、今後タクアン和尚小早川様並みにインパクトのあるキャラが登場するか、1話どころかほんの2~3分の間に「うおっ まぶしっ」→「言われなくてもスタコラサッサだぜ」→「少し借りるぞ」→「すげぇ…あの爺さん、落ちながら戦ってる…」などの神展開を見せる必要があると思いますが、なかなか厳しいのでは。 単に作画やコンテの酷いアニメはキャプ画像や動画を見て笑う事はできますが、そこからFlashやMADを作ろうという創作意欲が湧くかどうかはまた別の問題です。その意味ではMUSASHIほど創作意欲をかき立てるアニメもなかなかありません。登場人物どころかさえも愛されるのですから。「財前丈太郎」を1話だけ見た限りでは、主人公の財前以外にキャラが立ってる人物はおらず、ネタとしても今後盛り上がり続けるかどうかは微妙な気がします。今後の展開にもよりますが…。

ポスト「MUSASHI-GUN道」への道

MUSASHI-GUN道」の成功(?)により、一部では「もしかしたら超低予算で作られたクオリティの低いアニメが受けるようになるんじゃね?」との危惧が出ていますが、個人的には大丈夫かなと思っています。MUSASHI絶妙なバランスの上に成り立った奇跡のような作品なので。狙って量産できるようなものではない、と思います。単なる駄作ではMUSASHIの壁を越える事はできないはず。少なくとも、構想は12年以上で。 「ただの人間には興味ありません。この中にムサシ、ロウニン、タクアン和尚、夢姫がいたら、 あたしのところに来なさい。以上」(©涼宮ハルヒ