初恋のきた道(1999年)

初恋のきた道 (字幕版)

これ以上の映画には当分出会えないかもしれない。そこまで思った。
もちろん映画の評価や好みは人それぞれだけど…。

物語はモノクロで始まる。お父さんが急に亡くなったので村に帰って来る息子。そしたら母親(注:ばあさん)は「棺はどうしても担いで運ばなければ」とか「布は自分で織らないと」などとワガママ三昧。周りの人が「人手が足りないからクルマで運ぼうよ」「布なら買って来るよ」と言ってるにも関わらず、だ。もうね(略)。なんだよこのバアさんは。いい歳なんだから人の言う事ぐらい大人しく聞けっ!…と思ってたら回想が始まる。父と母がなぜ出会ったのか、という物語が。

そこからは…いや、止めておこう。とにかく色彩の美しさ、これに尽きる。シーンの一つ一つが1枚の絵のようだ。春も冬も美しい。それにチャン・ツィイーの愛らしい表情が重なって深い郷愁を誘う。この風景も少女の純粋さも、ほとんどの人が忘れ去ってしまったものだと思う。

冷静に考えると「結局お前は娘の頃からワガママ三昧じゃないか」とも思う。中学生の恋愛だ。一歩間違ったらストーカーだ。それでも「やっぱり奥様、初恋って純粋でいいわねぇ~」という気持ちが勝ってしまう。

で、これは恋愛だけを描いた話ではない。家族愛とか師弟愛とかも入ってる。それらを繋ぐ象徴としての「道」。原題は「The Road Home(家路)」ですが、そっちの方があってるかもしれない。ちなみに背景には反右派闘争('57~)もあるようで。

話としては何のひねりもなく、淡々と話が進んで予定通りに終わるだけ。それでも最後は・゚・(ノД`)・゚・これ。バアさんの気持ちもよく分かったし。たった89分なのにこれほど印象に残るとは、流石だよなチャン・イーモウ(「英雄」の監督でもある)。ネタバレになるから何でも書けないけど、泣かせるシーンは多い。


やはり最も印象に残ったのはアレです、瀬戸物直し職人。どうやって直すのかと思ったら、接着剤とか使わないの(スゴイ技術だ)。今は中国でもそんな職人さんはいなくて、廃業した人をわざわざ撮影のために連れてきたみたいです。こうやって職人さんが失われていくわけで…。誰か弟子入りして跡継ぎしてもらえないだろうか(無理)。